灰になった②




19日、祖父が亡くなった翌日の朝、学校へ向かい、先生に無理を言って水曜日にするはずだった履修登録の手続きをしてもらった。そして昼の飛行機で実家に帰った。


母はお通夜の準備で忙しく、母の職場の人が空港まで迎えに来てくれた。途中で母に買い物を頼まれたが、職場のおばちゃんが、私達が行くからあんたは早くじーちゃんに会ってあげなさい、と言ってくれた。その時はまだ実感が湧いてなかったので、そんなに急いでないのにな、とどこか他人事のように思っていた。

家に帰るとめったに会わない親戚たちが忙しそうにしている。寒いぐらいにクーラーで冷えた部屋に棺桶が置かれていて、その中に、いつも出かける時に被っていた帽子を被った祖父が、青白い顔で寝ていた。棺桶の隣に座って近づくと、体温を感じない体に、祖父は寝ているのではないと一瞬で理解して、涙が溢れ出た。私の後ろでは親戚が慌ただしく葬式の準備、葬儀屋との段取りを確認していて、しばらく祖父の隣に座っていたが、悲しんでいるよりも私も何かしなくてはと気持ちが切り替わり、涙はあっさり止まった。

喪服を持っていなかったので、母からのお使いと一緒に喪服を買いに行った。ひとりで車を運転していると案外冷静で、忙しく動いていた親戚と同じように、葬式の段取りや必要なものの買い出し、やることが次々と頭の中を巡り、その日祖父の遺体と対面してから、悲しんだ時間は僅かだった。

買い物から帰り、喪服に着替えると私は遺族としてお通夜に来る親戚や客にお茶を出したり、あっという間に時間が過ぎた。最後の客が帰る頃には夜もふけていた。たくさんの人が来て、私たちの知らなかった祖父の友人から思い出話を聞き、悲しむ暇はなかったし、祖父のためにたくさんの人が来てくれて嬉しかった。お風呂に入り、一息つくと急にお腹が空いてきて、夜10時ごろから祖父の棺桶の隣で酒盛りが始まった。最後には家に帰れて、孫にも会えてよかったね、と話しながら、遺体を横にして穏やかで楽しい時間を過ごせたのは、今思うと不思議な感じだった。その日は棺桶の隣に布団をひいて、祖母、母、兄と5人で寝た。